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「両親から子へ」と変化し、結婚後は「子から両親へ」となっている。これは両親との同居や一緒の食事が困難になってきたことの補償という意味合いが強くなってきている。妻の両親へのお金の流れも、タブーを侵しながら増加している。

両親は、いまだに子供たちが学校を出ると働いて家族経済に貢献することを期待しており、その割合は89.5%(1973年)から75.3%(1986年)に減ったものの、まだたいへん高い。

高齢期の経済を子供にたよる親の割合は、まだ圧倒的である。ただ、その割合は1973年には高く80.9%であったが、1986年には61.1%に減少している。この減少は、妻の年齢、教育程度、人種、夫の職業、収入に逆比例している。高齢期に自分たちの収入で自活する夫婦が増える傾向にある。

両親と同居していないカップルの方が、どちらかというと相互の訪問回数が増えたり、電話する回数が増えたりする割合が多くなるなど、親密な交流を維持する傾向がある。これは新しい両親一子供関係の傾向であろう。頻繁な訪問はお互いの住まいの距離によるところが大きい。

結婚を自分の意思で決定する割合が、両親と共同で決定するよりもはるかに多い。これは、両親の子の結婚に関する影響力が非常に弱くなっていることを意味する。とくに現代的な生活志向の強い家族においてこの傾向は強い。

子の教育は親の重要な責任と考えられており、多くの親は子に高い教育を望んでいる。しかし、親が子に高い教育の望むのは単に功利的な動機だけではなく、子に将来の幸福を望むからである。

総括して、台湾の家族における世代間の関係は、社会の近代化、都市化、産業化などの影響で、さまざまな視点で変容している。ここで重要な疑問は、すべての年老いた親が将来、自分たち自身で自立し、生活を送ることができるかどうかである。もし「NO」ならば、だれがこの責任を負うのか。現在の急速な高齢化の時代に、深刻な注視を求められる問題である。

 

 

 

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